翔んで埼玉 感想

その名の通り、埼玉県への徹底的なディスりで話題を呼んでいる映画です!

パタリロ!』で知られる漫画家の魔夜峰央が、1982年に発表した未完の同題作品がまさかの映画化!!

主演に男装の二階堂ふみGACKT。この二人が高校生を演じています。

監督は阿部寛市村正親北村一輝古代ローマ人を演じさせて大ヒットした『テルマエ・ロマエ』の武内英樹監督。

本作もまた手間暇かけて“漫画の虚構”の実写化に挑みました。主題歌は『佐賀県』で佐賀を自虐的に扱ったはなわが担当。実は彼は埼玉県春日部市で生まれています。

灼熱の熊谷に住むOLの愛海は、結納のために東京に向かいます。

両親の運転する車のラジオから聞こえてくるのは、埼玉解放戦線がいかにして東京都に対して闘いを挑んだかという話。

白鵬堂学院。それは都会指数という基準でクラス分けされているエリート意識の塊のような高校。ここの頂点に君臨するのが都知事の長男百美。

しかし、そんな彼の前に一人の転校生がやってきます。彼の名前は麻実麗、アメリカ帰りの資産家の息子でした。

あらゆる面で百美を上回る才能を見せつける麗。

最初は対抗心バリバリだった百美でしたが、麗の魅力に惹かれてやがて恋に似た感情を抱きます。

そんなある日、二人が出かけた先で麗のメイドが“埼玉狩り”にあっているところに出くわします。

間に入る麗ですが、彼にも埼玉県人ではないかと疑いがかかります。

踏み絵代わりに差し出された草加せんべいを踏めなかった麗は、彼も埼玉県人である子が明らかになります。

池袋を経由して埼玉に戻ろうとした麗と、彼を慕って追いかけてきた百美は、埼玉解放戦線とは犬猿の仲の千葉解放戦線に捕まってしまいます。

千葉解放戦線は埼玉同様に東京に対して通行手形撤廃を目指して戦う組織でした。

そしてその指導者は執事として百美の家に仕える阿久津でした。

阿久津は都知事に仕える一方で、千葉の権利向上を目指して暗躍していたのです。

阿久津は百美と麗を東京側に引き渡すことで、さらに自分たちの希望が叶うと考えています。

そこに割って入ったのが銀髪の剣士。彼こそが埼玉解放戦線の伝説的な指導者埼玉デュークでした。

デュークたちの助けによって埼玉に逃げ延びた二人、しかし百美がサイタマラリヤに感染してしまいます。

デュークは血清のある都内へ密かに百美を届けますが、その道中で銃撃に遭います。

デューク死すの一報は、埼玉解放戦線に大きな動揺が走ります。

さらにこれをチャンスと見た千葉解放戦線が攻め込んできます。

何とか埼玉解放戦線を固めた麗がそれを迎え撃ちます。

決戦の夜、意外な人物が阿久津のもとに訪れます。

それは埼玉デュークと歴代都知事が闇通行手形販売という、悪どい商売で貯めこんだ金塊を発見した百美。

埼玉と千葉の共倒れさせることを考えて、都知事の狙いを知った麗と阿久津が同盟を組み都庁に攻め入った同盟軍は、勝利を手にしました。

 

自虐的な郷土愛
はなわの『佐賀県』。鳥取知事の“スタバはないけど砂場はある”ではありませんが、自虐的な郷土愛の示し方がちょっとしたブームになっています。

話す方も話される方も、苦笑いしつつもどこか好意的に受け入れられる不思議なブームです。

例えば漫画の『お前はまだグンマを知らない』や、鷹の爪団で知られるFROGMANの島根自虐カレンダーなどがあります。

こういったことは何も地方に限ったことではなくて、いつまでも終わらない横浜駅の工事をネタにした小説『横浜駅SF』などもあります。

ちなみに、私は横浜市身ですが、横浜市民は神奈川県への帰属性が薄くて有名です

 

ここまで突き抜けた題材でなくてもフィクションはフィクションであり、虚構の存在、創造物でしかありません。

それを少なくとも上映時間の間は、忘れさせるのが創り手の義務なのですが、意外とこういう基本的なことを疎かにする創り手が多いのも現実です。

そんな中で武内英樹監督は、『のだめカンタービレ』『テルマエ・ロマエ』『今夜、ロマンス劇場で』と言った作品で丁寧に時間と手間をかけて虚構を現実に見せくれます。

テルマエ・ロマエ』では、わざわざイタリアの老舗映画スタジオのチネチッタにロケに行ったほどです。

その部分をしっかりしていることもあって、『翔んで埼玉』が変な物語には思えても、二階堂ふみGACKTが高校生を演じていても変に思えないのです。